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合併症

深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)/
肺塞栓症(はいそくせんしょう)

深部静脈血栓症とは、下肢(太ももから足先まで)の静脈に血の塊(血栓)ができて血管をふさいでしまうことです。血流が悪くなり、下肢がむくんだりふくらはぎが痛んだりします。これは、飛行機などの乗り物で長時間足を動かさないでいるときにもおこります。いわゆるエコノミークラス症候群(旅行血栓症)です。
この血栓が何かの拍子にはがれて、血流に乗って肺まで到達し、肺の血管をふさいでしまうのが肺塞栓症です。肺の血管がふさがると、血液ガスの交換(二酸化炭素と酸素の交換)がうまくおこなわれず、呼吸困難や胸の痛みを感じるようになります。時に取り返しのつかない重篤な症状を引き起こす可能性があります。
予防のために、手術中から術後にかけて、一定の時間をおいて下肢の血管を圧迫する装置(間欠的(かんけつてき)空気圧迫装置)を装着したり、あるいは血栓をできにくくする薬剤(低用量未分画(ていようりょうみぶんかく)ヘパリン)を投与したりします。また、弾性ストッキング[?]を着用する場合もあります。患者さん自身でできる予防法としては、足首の曲げ伸ばし運動があります。

細菌感染(化膿)

感染すると手術した部位の皮膚が赤くなったり、腫れたり、膿が出たりします。ひどい場合には、人工関節を抜きとらなければならないこともあります。
感染には、術後早期におこるものと、比較的年月を経てからおこるものとがあります。退院後も、むし歯や水虫、また、足のけがなどに注意し、体内での細菌感染がおこらないように気をつけてください。ふかづめをするのもやめましょう。

人工関節のゆるみ、破損、摩耗(すり減る)

人工関節を使用していると、自然にゆるんだり、破損したり、摩耗する(すり減る)場合があります。ゆるみは、人工関節の固定性が悪くなってずれてしまうことです。
摩耗は、主に人工関節を構成するプラスティックの部分に見られます。人工関節が少しずつすり減ると摩耗粉が出ます。その摩耗粉が周辺の骨を溶かす原因となる場合があります。退院後に生活を続けていくなかで、痛みなどの問題がなくても、定期的に受診を続けましょう。

二次的な骨折

まれな合併症として、患者さんの状態によっては、人工関節を設置した周辺の骨に負担がかかり、骨折をすることがあります。

脱臼

膝関節あるいは膝蓋骨(ひざの皿)がはずれてしまう状態です。人工股関節と違い、膝の人工関節での脱臼は非常にまれですが、膝関節をひねったり、ひざまずいたりすると脱臼する可能性があります。これらの動作をさけましょう。

人工材料に対する生体の異常反応(アレルギー反応)

ごくまれに金属などにアレルギー反応を示すかたがいます。金属アレルギーの既往があるかたは、そのことを手術前に医師に必ず伝えてください。
なお、人工関節に使用される金属は、人体への影響が比較的少ないとされていて、アクセサリーなどの金属アレルギーがあっても、人工関節では反応をおこさない場合がほとんどです。

※詳しくは医師におたずねください。

この情報サイトの内容は、整形外科専門医の監修を受けておりますが、患者さんの状態は個人により異なります。
詳しくは、医療機関で受診して、主治医にご相談下さい。

弾性(だんせい)ストッキング
非常に弾力性の高いストッキング(靴下)です。下肢の血管を圧迫して、足先から心臓へ戻る血液の流れを助ける効果があります。