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股関節のはなし/主な病気

股関節のはなし

股関節

股関節解剖(髄腔) 大腿骨(太ももの骨)の上端の骨頭(こっとう=丸くなっている部分)が、寛骨臼(かんこつきゅう)=臼蓋(きゅうがい=骨盤のくぼみ)にはまり込むような形になっています。
正常な股関節では、骨頭のおよそ4/5が寛骨臼に包み込まれています。そのため、安定性がよく、周辺の筋肉を使って前後、左右、あるいは回したりと、自在に動かすことができます。
歩行時には体重のおよそ3倍の力が加わります。

大腿骨

大腿骨やすねの骨(脛骨)、腕の骨などは、その形状から長管骨(ちょうかんこつ)と呼ばれています。
長管骨の中央には髄腔(ずいくう)と呼ばれる空洞があり、ちょうど筒のような形になっています。
人工股関節全置換術では、この髄腔を利用して人工関節を設置します。

中殿筋

股関節を動かす筋肉の中でも、中殿筋は、立ったり歩いたりするときにとても重要な役割をはたします。中殿筋は、骨盤の骨と大腿骨を結んでいます。
片足で立ったときにバランスを保っていられるのも、この筋肉がしっかりと働いているからです。中殿筋の力が弱いと、骨盤を支えることができず体が傾きます。そのため、歩くときに体が左右にゆれてしまいます。

中殿筋をきたえる運動

中殿筋の働き_文字有c

股関節の主な病気と症状

股関節の主な病気

変形性股関節症

成人の股関節疾患の中で、もっとも多くみられるもので、高齢者に多く、人口の高齢化とともに年々増加傾向にあります。原因によって一次性のものと二次性のものとに分類され、日本では二次性変形性股関節症の割合がとても高く、女性に多いのが特徴です。

一次性変形性股関節症 原因がわからずに関節軟骨[?]がすり減り、骨が変形します。
二次性変形性股関節症 生まれつきの股関節の脱臼(先天性股関節脱臼(せんてんせいこかんせつだっきゅう))や股関節の発育が悪いこと(臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん))などが原因で発症するものです。

関節にかかる体重を吸収してすべりをよくしている関節軟骨が傷ついたりすり減ったりして、骨が壊れたり、また棘のように増殖する(骨棘(こつきょく))ために生じる病気です。
痛みが出たり、また、安静により痛みが軽くなったりします。これをくり返しながら、ゆっくりと進行していく病気です。まれに、数ヶ月のうちに急激に悪化することもあります。

変形性股関節症_文字有c

臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)

臼蓋(骨盤の骨)の発育が不良で小さく、骨頭を十分におおうことができない状態をいいます。体重の数倍の力がかかる関節ですから、骨頭をうける臼蓋の面積が狭いと、その狭い接触面に集中的に力が加わることになります。その結果、軟骨は早くすり切れてしまいます。

臼蓋形成不全_文字有c

関節リウマチ

関節リウマチは、関節に炎症がおこり、腫れて痛む病気です。男女比1対4の割合で女性に多い疾患です。30~50歳前後がもっとも多く、若者から高齢者全般におよびます。原因はまだ明らかにされていませんが、自己免疫疾患[?]のひとつと考えられています。
関節をおおっている関節包の内側にある滑膜[?]が炎症をおこして増殖し、骨や軟骨[?]が徐々に破壊されていきます。手足の指の関節に痛みや腫れをともなう関節炎から始まり、やがて肘やひざ、肩、首などの関節に広がっていきます。

股関節におよぶ場合には、股関節が伸ばせなくなったり、立ったり座ったりする動作や階段の昇り降りの動作などがスムースにできなくなったりします。また、股関節を動かせる範囲が狭くなるため、歩き方がぎこちなくなります。

治療としては、抗リウマチ薬やステロイド剤、痛み止めの薬などの薬物療法や、リハビリテーションなどの運動療法をおこないます。関節の破壊が進行すると人工股関節全置換術などの手術療法の適応となります。

リウマチ21.infoのホームページ

(特発性)大腿骨頭壊死症

骨頭の血流c 大腿骨頭を流れる血液の流れが悪くなり、栄養が行き届かなくなって骨頭が壊死してしまう病気です。
進行すると、骨頭がつぶれて(圧潰(あっかい))、軟骨がなくなり、骨頭と臼蓋側の骨とが直接ぶつかって、関節全体が破壊されます(関節症性変化(かんせつしょうせいへんか))。

関節機能の予後(将来の見通し)は、壊死した部分の位置と大きさでかなり推定することができます。大腿骨頭の内側のみの壊死では、治療の必要性があまりなく、中央から外側へと壊死が大きくなるにつれて、時間とともに壊死部が圧潰し、痛みなどの症状が出てきます。圧潰が軽度で停止すると、症状も自然に軽快することがありますが、圧潰による症状が持続する場合は、骨切り術人工骨頭置換術(じんこうこっとうちかんじゅつ)[?]人工股関節全置換術をおこなうこともあります。

原因は明らかにされていませんが、ステロイド剤を多量に使用した場合や、アルコール摂取量の多い人などに発症することが多いようです。
また、大腿骨頭壊死症は国の特定疾患に指定されています。

難病情報センターのホームページ

大腿骨頭壊死症2c

股関節の症状

主な症状は、痛みと動きが悪くなることです。そのために、重いものを持てない、長く歩けない、階段を昇り降りが困難、靴下がはきづらい、足の爪が切りづらいなど、日常生活上たいへん不便になります。

股関節の痛み

はじめは重たい感じ、張った感じ、長く歩いた後の疲労感などで始まります。スポーツの後や動作の変わり目に感じることが多くあります。
また、痛みの部位も股関節の他に、腰、お尻、太もも、膝などに感じることもあります。これを関連痛といいます。

関節の動きが悪い

症状が進行していくと、しだいに股関節の動きは悪くなり、動く範囲が狭くなっていきます。曲がりが90度以下になると、爪きりや靴下の脱ぎ履きの動作などが困難になります。また、股関節が曲がったままで伸びなくなった場合には、それを補うように腰がそってしまい、お尻が出っぱったような姿勢になります。

脚を引きずる(跛行(はこう))

痛みが強くなったり、疲れてくると脚を引きずる(跛行(はこう)する)ようになります。これは筋力低下や、痛みから逃れようとするためにおこる現象です。

左右の脚の長さがちがう(脚長差)

股関節が変形して関節のすき間がなくなったり、股関節が脱臼していると、正常な状態と比べて脚の長さが短くなってしまいます。左右の脚の長さが大きく異なると、体のバランスがくずれて、歩行時などは左右にからだがゆれるようになり、不安定になります。

この情報サイトの内容は、整形外科専門医の監修を受けておりますが、患者さんの状態は個人により異なります。
詳しくは、医療機関で受診して、主治医にご相談下さい。

関節軟骨(かんせつなんこつ)
関節軟骨(かんせつなんこつ)は、関節の骨の表面をおおっている厚さ2~7mm程度の層です。
軟骨細胞とその他の成分(繊維成分であるコラーゲン繊維や、ゲル状の物質プロテオグリカンなど)からなっていて、水分量が多いのが特徴です。 関節にかかる体重を吸収して、関節の動きをなめらかにします。
血管、リンパ管、神経が通っていないため、いったん傷つくとなかなか回復しないと言われています。
自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)
人体に細菌やウイルスなどの異物が入ってくると、体の中では、その異物に対して攻撃し排除しようとする反応がおきます。これを免疫(めんえき)反応といいます。
この反応が正常に機能していると、異物と自分の細胞をきちんと見分け、異物のみを選んで攻撃することができます。しかし、免疫機能に問題が生じると、異物と自分の細胞との区別がつかずに、自分の細胞、つまり自分自身を攻撃してしまうことがあります。このように自分自身を攻撃してしまうことで、様々な病気を引き起こす病気を総称して自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)と呼んでいます。
滑膜(かつまく)
関節包(かんせつほう)の内側の関節にもっとも近いところにある膜です。関節液(かんせつえき)を生産して関節内に送り込み、古くなった関節液を再び吸収して取りのぞきます。
関節リウマチなどによって滑膜(かつまく)に炎症がおこると、膜が肥厚(厚くなる)したり増殖して、正常に機能しなくなり、さらに、炎症が続いて滑膜(かつまく)の増殖が進むと、徐々に軟骨や骨を破壊していきます。
分泌する関節液(かんせつえき)は粘調度(ねんちょうど)(ねばりの度合い)が低くなり量も増えます。粘調度の低い関節液(かんせつえき)は、潤滑油(じゅんかつゆ)としての役割が十分におこなえなくなります。また、古くなった関節液(かんせつえき)の吸収が追いつかず、関節内に大量の液体が充満して、関節水腫(かんせつすいしゅ)(いわゆる「水が貯まる」状態)を引き起こし、関節の腫れや痛みを増強する原因になります。
人工骨頭置換術(じんこうこっとうちかんじゅつ)
大腿骨(だいたいこつ)(太ももの骨)の上端の丸い骨頭(こっとう)の部分を、人工の骨頭に置きかえる手術です。
人工骨頭は、人工関節と同様に特殊な金属でできています。人工骨頭を設置する方法は人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)とよく似ていますが、人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)とは違い、臼蓋(きゅうがい)(骨盤の骨)は手術しません。 01_img19