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人工股関節の術後の動作制限からの解放を目指して

股関節センター 奥田 直樹日産厚生会 玉川病院

私達が人工股関節手術において気をつけていることは、とてもシンプルです。それは、脱臼(人工関節がはずれる)しないこと、それからあしの長さ(脚長)をそろえることです。脱臼しやすい人工関節は、やっかいです。脱臼は脚を特定の方向に向けることで生じます。そこで、やってはいけない姿勢が生じます。股関節を深く曲げてはいけない、脚を内側によせてはいけない、脚を内側にねじってはいけない、などなどです。これにより椅子の座り方やトイレの仕方、車や自転車の乗り方など、様々な日常生活の場面で禁止の姿勢が生じます。それでもいざ脱臼すると急に痛くなって動けなくなります。こうなればすぐに病院にかけ込んで元の位置に戻して(整復して)もらわなくてはなりません。

このように脱臼は困った合併症なので、脱臼しづらくするために手術のさい、脚を伸ばすことがあります。脚を伸ばすと関節のゆるみが減って緊張が強くなり脱臼しにくくなります。しかし脚を伸ばしすぎると脚長の違いを自覚するようになり、歩くと肩がゆれるようになります。

脱臼しないことと、脚長をそろえること。この二つには相反する関係があるので、両立させることは意外に難しいのです。この問題に対処するために私達は術前に詳細に患者様の股関節のかたちを計測・把握し、それぞれの患者様に適したインプラント(人工関節の本体)を選択して、術前計画を立てます。そして手術では筋肉を切らないのはもちろん、関節のゆるみにつながる関節周囲組織へのダメージを最小限にして、本当の意味でのMIS (Minimal Invasive Surgery;最小侵襲手術)でインプラントを設置します。こうして、禁止の姿勢がなくても脱臼しない、かつ脚長がそろって歩くときに肩がゆれない人工股関節手術ができるのです。

お知らせ:2011年9月3日(土)に奥田先生の市民健康講座が開催されます。
詳しくはこちら⇒2011/09/03 東京都杉並区で股関節の市民講座が開催されます。