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進化する人工股関節置換術

整形外科 春藤基之我汝会さっぽろ病院

我汝会さっぽろ病院  院長 春藤基之

人工股関節置換術が一般的に行われるようになってからすでに40年以上経過しています。そして本術式は数ある外科手術のなかでも非常に良好で安定した結果をもたらしてきました。長年の痛みがうそのようになくなり、動きの悪かった関節がなめらかに動くようになり、脚をひきずらずにきれいに歩けるようになる。股関節疾患に悩む患者さんの要求をほとんどすべて満たすことのできる優れた治療法です。

しかし人工股関節の耐久性の問題(ゆるみや脱臼)の懸念からいろいろな制限事項が指導されてきました。1日何歩以上あるいてはいけない、何kg以上のものをもってはいけない、正坐やしゃがみこみや和式トイレはいけないなどなど。「痛みがとれてこれだけ歩ければ十分。」と満足されている患者さんもいらっしゃいますが、今では術後の日常生活やスポーツ活動などに関する患者さんの要求は高くなってきています。そのニーズに答えるべく医師や人工関節メーカーもいろいろな取り組みをしてきました。耐摩耗性に優れた材質やより大きな可動域を有する人工関節のデザイン、軟部組織のダメージの少ない進入法など、まだまだこれからも本術式は進化し続けていくでしょう。

術後の検診で「気づいたら何でもやってしまっています。」とか「テニスの大会で優勝しました。」という患者さんの声を聞くと本当によかったなと思います。それでもまだ私はスポーツの内容によっては「それはちょっとおすすめできない・・・」と制限をしてしまうことがありますが、施設によっては全く制限なし(術後にロッククライミングまでしている)のところもあるようです。ゆるみや脱臼の心配がない、できるだけ正常に近い股関節ができれば、といつも思っています。