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第2回 『市民向け健康講座』

病気にかかったとき、皆さんはどうやって病気や治療のことを調べますか?

本やインターネット、テレビなどを利用する方が増えていますが、そこから得られる情報は一方的なもので、何が正しいかを整理することは大変難しく、間違った知識を正しいものと誤解してしまうこともあります。そのことは、実際治療にあたる医師も問題視しており、最近では、悩みを抱えている方に正しい知識を提供するための市民向け健康講座が開催されています。

市民向け健康講座の良い点

*直接先生の顔を見ながら話を聞くことができる。
*質問ができるので、疑問を解消でき誤解が少ない。
*外来では聞けないことを詳しく聞くことができる。
*本やインターネット、テレビなどで得た様々な知識を整理することができる。

市民講座の実際

wadai002今回、2007年8月に札幌で開催された市民向け健康講座で、実際どのようなことが行われているのか、また、参加した方々の感想をリポートしました。 今回の市民講座は、医療法人 北海道整形外科記念病院 整形外科診療部長の鈴木孝治先生をはじめとして、同科の医師4名、リハビリテーション科長、看護師長の計6名の講師が講演を行い、質問に答えました。

  1. 市民講座の目的を先生に伺いました
  2. 市民講座の内容
  3. 質問コーナー
  4. 参加者アンケート結果

1.市民講座の目的を先生に伺いました

「関節に痛みがあり、つらい思いをしている人たちに、段階に応じた適切な治療をすれば、元気に日常生活を送ることができることを伝えたいと思っていました。また、適切な時期に治療をすることの大切さも知ってもらいたいということです。今は、インターネットやテレビや本など情報があふれていますが、それが正しいかどうかを判断することができません。このような情報を整理するためにも、良い機会だと思います。」

2.市民講座の内容

①膝のしくみと痛みの原因
膝の役割や動き、主な膝の病気やその症状についてのお話です。膝の病気で多い変形性膝関節症の進行度をレントゲンで説明すると、参加者からは、「どの程度で手術なのか」というような質問も出ていました。

②変形性膝関節症に対する保存的治療
保存的療法とは、手術をせずに、運動や薬、装具などを用いる治療のことです。 「軟骨がすり減っていく」という原因を直接取り除く治療はまだありませんが、痛みなどの症状に対する治療方法はいろいろあります。自宅でできる簡単な筋力トレーニングや、どのような運動が適しているのか、週にどの程度行えばよいのかなど、具体的なものもあり、また、O脚を矯正するための足底板や、薬や湿布、関節注射などについても説明がありました。「自分でできることは積極的にやっていく」という姿勢で病気と向き合っていくことが大切のようです。

③膝の痛みに対する運動療法
リハビリテーションについては、実際に手術後指導するリハビリテーション科の科長さんからお話がありました。 膝が痛くならないために何をするべきか、さまざまなトレーニング、また、トレーニング時の注意点など具体的な説明がありました。

④変形性膝関節症に対する手術治療
手術療法として、小さな傷から膝の中にカメラを入れて治療する関節鏡視下(かんせつきょうしか)手術、骨を切って傾きを変えることで関節の変形を矯正する高位脛骨骨切り術(こうい けいこつ こつきりじゅつ)の内容と、実際の入院治療スケジュールなどにもふれていました。

⑤人工膝関節による最近の治療・満足度の高い人工膝関節の獲得を目指して
人工関節手術はどのような治療か、どのような患者さんに行うのかについて説明がありました。また、手術後のリハビリテーションについても、病院独自で工夫している方法や、患者さんが自分でできるものも紹介がありました。さらに、退院後の生活上の注意や、できるスポーツなどについてもお話がありました。

⑥人工膝関節置換術後の経過
入院中に身の回りのお世話をする病棟の看護師長さんからは、人工膝関節手術後1年が経過した患者さんへのアンケート調査の報告がありました。痛み、膝の曲がり、歩ける距離などについては、8割以上の方が満足していました。また、膝関節症にならない、進ませないためのポイントとして、『肥満の予防』『筋力をつける』『膝の違和感があるときは、早めに医師を受診する』の3点を挙げていました。

3.質問コーナー

講演の後には、参加者からの質問とそれに対する回答がありました。

Q,水を抜くと癖になる?

A,間違いです!溜まった水は抜く必要があります。癖になるのではなく、抜いてもなお膝に水が溜まるぐらい膝に炎症が起きているということ。水を溜めておくことは膝にとって悪影響です。

Q,サプリメントや健康食品の効果は?

A,初期の変形性関節症の痛みの軽減には多少の効果はあるかも…
しかし、サプリメントや健康食品は、厳密に効果判定した医療品ではなく、食品の一種なので、ご自身で製品毎の安全性や費用対効果を確認しながら注意して使用する必要があるでしょう。

Q,人工関節手術をしたら正座できないのでしょうか?

A,開発したメーカーからは許可されていません。人工関節のポリエチレンが早くすり減ってしまうことがあります。

Q,両方の膝が悪いときはどうするのですか?

A,両方一度に手術することも可能ですが、手術中の出血量や術後の体力の回復など総合的に考えて、北海道整形外科記念病院では、片方づつ手術を行っています。

Q,小さい傷で手術ができると聞きますが?

A,小さい傷のお陰で手術時間が短くなったり、出血量が減ったり、人工関節が長持ちするようになったという研究報告はありません。しかしながら、必要以上に大きな傷にする必要はなく、必要最低限の傷で手術するのが、重要なことだと思います。北海道整形外科記念病院では、10~15センチの傷で手術を行っています。

注意:講座の内容は開催ごとに異なる場合があります。また、ここにある質問がすべての医療機関、患者さんにあてはまるものではありません。

4.参加者アンケート結果

wadai002zu1今回の市民講座に参加された方々のアンケート結果をご紹介します。
今回受講したきっかけとしては、自分の病気の知識を得るためという方が47%おり、膝に痛みを抱えて悩んでいる方の多さを実感しました。(図1)

wadai002zu2そのほかにも、「大変役に立った」「手術をしたが、今後の生活の参考になった」「進行させないための運動や生活上の注意点がわかりやすかった」などの意見が聞かれ77%の方が役に立ったとのことでした。(図2)

今回の注目点は、日ごろなかなか話を聞くことのできない、リハビリのスタッフや、看護師さんの話をきくことができたことでした。また、日ごろ病院で治療に当たっている先生たちにお会いすることができ、実際の病院の雰囲気もわかったように思います。病院を選ぶとき、クチコミや病院ランキングなどを利用される方が多いですが、市民講座で先生の人柄に触れ、治療方針などを聞くことも、病院選びの一助となるようです。 他にも、『関節の広場』イベント情報で随時、市民講座をご紹介していますので、お近くで開催される際は、一度参加されてみてはいかがでしょうか。

協力: 医療法人 北海道整形外科記念病院

この情報サイトの内容は、整形外科専門医の監修を受けておりますが、患者さんの状態は個人により異なります。
詳しくは、医療機関で受診して、主治医にご相談下さい。