かわむら整形外科 リウマチ・人工関節センター 川村大介
人工膝関節手術において下肢の機能軸(体重のかかる軸)に対して正しく調整すること、良好な軟部組織(靭帯など)のバランスを獲得することは正常に近い関節の働きを得ることができるといわれ、手術後の成績を向上させるためにとても重要であると考えられています。
手術後に下肢の軸の調整が悪い場合は、早期の人工関節のゆるみや磨耗を引き起こすといわれており、人工膝関節手術では正確な手術の方法が長期の成績を左右するといわれています。
当院では、2008年10月よりストライカー社製のナビゲーションシステムを用いて人工膝関節手術を行っています。ナビゲーションシステムとは、『カーナビ』を想像していただければわかると思いますが、赤外線を使用して手術の器具が現在どの位置にあるか、計画通りに手術をするためにはどの方向へどれくらい移動すればよいかなどをコンピュータが計測するものです。
最近のナビゲーションシステムは以前のものに比べ、本体が小型化しソフトの修正も行われて操作性、感度が改善されてかなり使いやすくなっています。その正確性も最近の学会ではナビゲーションを使用した場合は90%台、ナビゲーションを使用しない場合は70%台とナビゲーションを使用すると手術の精度はかなり良くなっているようです。
皆さんは、ナビゲーションといったら何もしなくてもコンピュータがやってくれると思っているかもしれませんが、そうではありません。私たち術者は手術前に患者さんの膝の変形、腫れの程度をまず自分の手で触れて、さらにレントゲンやCTなどの画像も十分に検討して手術に臨んでいます。
とくに現在のナビゲーションは以前のものに比べて高度に変形した膝の手術にはかなり役に立つツールと考えています。ナビゲーションシステムの問題である手術時間が長くなることに関して、現在では通常の手術よりも10~15分長くなるくらいで手術が終わるようになっています。
ナビゲーションシステムには多少の欠点はありますが、有用性が欠点に勝ると考えています。今後も人工関節が長持ちするような手術を行なっていきたいと思います。