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変形性股関節症とリハビリテーション

日本人と変形性股関節症

股関節に痛みを引き起こす病気には変形性股関節症があります。その名のとおり股関節の骨が変形してしまう病気です。関節の中には軟骨といって、関節をスムーズに動かすためのクッションが入っているのですが、それが次第に磨り減ってしまい、最後には骨まで削られてしまうという病気なのです。この病気になると歩くことが不自由になり、ひどい場合には夜も痛みで眠ることができなくなります。変形性股関節症は体重の重いひとや激しく運動し関節に負担が過度にかかっている人がなりますが、実はそれ以外に特徴的なことがあります。それは日本人の女性に多いということです。正常な股関節はお椀の形をした臼蓋とボールの形をした骨頭が合わさった形をしています。お椀のなかでボールがクルクルと動くことで私たちは歩いているのです。 しかし、日本人の女性にはこのお椀の部分が生まれつき小さいかたがいます。これを臼蓋形成不全といいます。お椀が小さいためにボールがお椀からはみ出してしまい、次第に軟骨や骨が削られていくと、やがて変形性股関節症になってしまいます。

運動療法の重要性

変形性股関節症の治療として私が患者さまに勧めているのは、まず運動療法です。特に臀筋群(でんきんぐん)といわれているお尻の筋肉や太ももの筋肉を強化します。多くの患者さまが痛みのために足をかばい、使わなくなっています。そのために股関節周囲の筋力が低下しています。しかし筋力低下と股関節の痛みは非常に重要な関係があるのです。もともと股関節のお椀が小さいかたはボールがお椀のなかで不安定になりやすい状態にあります。それを安定させているのがこの筋力なのです。しかし、年齢を重ね筋力が衰えてくるとボールはお椀の中では不安定になり、最後はお椀の外にこぼれてしまいます。一度お椀の外にこぼれてしまうと、関節の痛みが起き、それをかばうことでさらに筋力は低下し、悪循環に陥ってしまうのです。筋力強化の運動療法はこの悪循環を断ち切るための手段として非常に効果的です。私が診察している患者さまのなかには、痛みがひどく歩行障害のあったかたでも運動療法を行うことで当初の痛みから日常生活に支障がない程度まで痛みが改善したかたが多くいらっしゃいます。

人工股関節手術

先ほど運動療法についてお話しましたが、運動療法だけでは痛みが取りきれない患者さまもいます。そのような患者さまに対して人工股関節置換手術を行っています。 人工股関節置換手術とは、軟骨や骨が削られてしまった状態の関節に対して、この部分を人工の関節に置き換える手術です。お椀にあたる臼蓋にカップを埋め込み、ボールにあたる骨頭にステム埋め込みます。この二つが合わさり本来の関節の機能として働くわけです。欧米人と違い、比較的小柄な日本人の骨に合うようにこのような小さな人工関節も開発されています。動きも生体の股関節に近づき、正座もできる患者さまもいらっしゃいます。

人工股関節手術後のリハビリテーション

股関節は球関節といって360度回転しながら動く関節である点で膝関節とは異なります。関節の動きが複雑であるために、生活環境にあったリハビリテーション指導が重要となります。たとえば、家のなかにある段差を乗り越える動作、車や自転車の乗り降り、お風呂に入る動作など、きちんと患者さま自身が習得していく必要があります。 ですから、リハビリテーションとして運動療法を行うことにより手術を回避することや、仮に人工関節の手術をされた場合でも正しい使い方を学ぶことが大切なのです。