一橋病院
副院長 兼股関節センター長 渡邉 実 先生
「もっと早く手術を受けていればよかった」
これは、手術を終えた患者様からよく聞かれる言葉です。
近年の人工股関節全置換術(THA)は、かつてとは大きく進化を遂げました。材料や手術技術の進歩により、一般的に手術時間は1時間程度、入院期間も2週間程というケースがほとんどです。以前のように「手術が怖い」「脱臼や摩耗が心配」といった不安も、現在では技術の進歩によりほとんど解消されています。
現在では先進のコンピュータ支援手術(CAS:Computer-Assisted Surgery)も普及し、人工関節をより正確に、そして患者様の体にやさしく設置することが可能です。これはカーナビやGoogleマップのように、術中の“道案内”をしてくれる技術。結果として、出血量の減少や手術時間の短縮、そして早期回復へとつながっています。
「もう、股関節のことを気にしない生活を送りませんか?」
長年の痛みによって、夜もぐっすり眠れない…歩くたびに顔をしかめる…そんな毎日から解放されるための選択肢のひとつが、人工関節手術です。股関節の存在を忘れて過ごせる日常は、決して夢ではありません。
若い世代の方には「人工関節を回避する選択肢」も
また、日本独自に発展してきた骨切り術の継承と進化にも力を入れている病院も増えてきました。
中でも、成長期の子どもや若年層(10代〜30代)には、人工関節を避けられる可能性がある「大腿骨頭回転骨切り術」や、「大腿骨球状内反回転骨切り術(SVRO)」などの選択肢があります。
従来は経験と勘に頼っていたこのような骨切り術も、ナビゲーションシステムを用いた事前シミュレーションと術中ガイドにより、精度と安全性が向上しました。さらにこの技術のおかげで、これまで長期入院が必要だった骨切り術も、今では両側同日に実施可能なほど、低侵襲化が進んでいます。
手術後にはスポーツ復帰を果たす若年層も
ナビゲーションを活用した正確な骨切り術により、術後の成績も向上。手術を受けた多くの患者様が、以前のように歩き、走り、再びスポーツに取り組む姿が見られるようになりました。
長年の股関節の痛みで悩んでいる方へ
様々な治療法が考えられ、手術も選択肢のひとつです。今後あなたの人生を前向きに変えるきっかけになるかもしれません。まずは主治医に相談していただき、一度専門医の診断を受けてみることをお勧めします。

プロフィール写真撮影:松村健人

