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新たな日常、ロボットが活躍するリハビリテーション

整形外科 部長 薮野 亙平 大阪中央病院

健康保険組合連合会 大阪中央病院

整形外科 部長    薮野 亙平(やぶの こうへい)   

先日、安倍首相が『コロナ時代の新たな日常』として、有効な治療法やワクチンが確立するまで、感染防止の取り組みに終わりはない。それまである程度の長期戦を覚悟する必要があると述べられた。

医療においても、接触感染を防ぐため、オンライン診療が初診から可能になったり、多くのことが変わりつつある。しかしながら、どうしても変えることが難しい医療の一つが、1日数時間セラピストと密に接する必要があるリハビリテーションである。この問題を打開する技術は、ロボットによるリハビリテーションではなかろうか?

ロボット技術が医療への応用が始まったのは、泌尿器、婦人科、消化器外科などに手術支援ロボットが導入されている。また、最近では、人工関節置換術においても手術支援ロボットが本邦に導入された。そして、リハビリテーションおいては、歩行をアシストするロボットリハビリテーションがある。

さて、ここでは人工股関節全置換術後の歩行アシストロボットの使用について、その理論とコロナ時代での有効活用法について説明したい。
まず、理論についである。股関節を長らく患っていると、股関節だけでなく周囲の筋肉も衰えてくる。そのため本来のその人が行っていた正しい歩行ができなくなったり、正しい歩行を忘れていることが多い。手術後に正しい歩行を獲得するために、歩行アシストロボットは、倒立振り子運動という理論で正しい歩行を手助けすることで、忘れられていた歩行時の本来もつ筋肉の動きを再現することが可能になる。歩行しながらそのわずかな瞬間のタイミングを判断し、左右の足を絶妙なタイミングでアシストすることは、ロボットにしかできない。このアシストを繰り返すことにより、病前の正しい歩行獲得が早期に可能となる。
また、コロナ時代における歩行アシストの有効な活用によるメリットは、人同士の接触時間低減できることである。歩行アシストとその動作を確認するセラピストは、直接対面せずにリハビリテーションが可能であり、さらに、歩行が安定し転倒する危険が減れば、お互いの距離をある程度保つことが可能となり、最終的にソーシャルディスタンスほど離れることもできる。

ロボットリハビリテーションは新しい分野で、人工関節術置換術後に行っている施設はほんどない。そのため、これらの研究は日本リハビリテーション医学会の支援にて行い、現在は人工膝関節置換術後のリハビリテーションにおいても大阪府医師会の支援で研究を続けている。

最後に、ロボットによる技術革新がコロナ時代医療の一助となり、これを機会にさらに発展することを期待したい。