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第20回 『満足度の高い人工関節置換術を受けるために』

wadai020-1 (1)手術を受ける患者さんは、当然『術後に高い満足度を得たい』と、期待していらっしゃるでしょう。今回は、そのために重要なポイントを、人工股関節・人工膝関節の手術をともに年間100例程されている、大阪市の住友病院 人工関節センター長 渋谷 高明先生に伺ってきました。

  1. 先生が考える満足度の高い関節置換術を受けるための重要なポイントは?
  2. 術後の患者満足度を左右するものは?
  3. 『いい人工関節・いい手術』が重要とのことですが、そのために行っていることを教えてください。
  4. 患者さんへのメッセージ(ビデオ)

1. 先生が考える満足度の高い関節置換術を受けるための重要なポイントは?

4つのポイントがあります。

手術前の説明・理解

1つ目は、手術前に丁寧な十分な説明を医師から受けて、人工関節とはどういう手術なのか、どれくらい良くなるのか、どのような合併症があるのか、ということをよく理解することです。手術後に早く仕事に復帰したい、ゴルフをしたい、といった希望を相談するのも重要で、患者さんお一人お一人のゴールを共有することで、術後のイメージが明確になりますし、例えば理学療法士と主治医でそのゴールに向かったリハビリテーションの計画というものができるのです。早期に職場復帰したいという若年の患者さんに対しては、患者さんの状態もよく評価した上で、最適な計画を立て、術後も計画通りに進んでいることを確認しながら入院期間を短くするということも行っています。

性能のよい人工関節・質の高い手術

2つ目に、性能のよい人工関節を使って、質の高い手術を受けて貰うことです。その結果痛みのない、機能的に優れた関節が得られ術後活動的に日常生活を送ることができるようになります。質の高い手術という点では、コンピューターを用いたナビゲーション手術とういう方法で手術を行っています。この方法により患者さんひとりひとりその状態にあわせ、正確な位置、角度で人工関節を骨に固定することができ、精度の高い手術が可能です。これは従来の手術に比べ少し時間もかかりますが、非常に重要なことで、優れた機能回復が得られ、優れた長期成績が期待できます。特に股関節では脱臼しにくくなるため、動作制限はほとんどしておらず、しゃがみ込み動作も可能です。また最近では、術後、ゴルフ、水泳、ハイキングなどスポーツやいろいろな趣味を楽しんでおられるかたも多いです。

痛みの少ないリハビリテーション

3つ目は、術後、苦痛が少ないリハビリテーションができることです。リハビリテーションは、術後、日常生活に必要な動作を行うことができるようにするためのものですが、それが苦痛だというのであれば計画通り進みません。小侵襲手術という皮膚、筋肉に対するダメージを最小限にする手術を行い、術後、リハビリ期間中に鎮痛剤(痛み止めの薬)を適切に十分に使用し、慣れた理学療法士がうまくリハビリテーションを行うことにより、痛みの少ないリハビリが行え、早期回復、早期退院、早期社会復帰が可能になります。

術後の定期検診で長期のフォローアップ

4つめは、術後、長期にわたる外来通院が大事です。定期的に異常が起こっていないかチェックを受け、多くは遠い将来のことではありますが、何らかの不具合が生じた場合、再置換術(入れ換えの手術))を適切なタイミングで、適切な方法で受けることが重要です。術後は痛みもなくなって、受診を忘れてしまいそうですが、医師から指示されたタイミングで外来通院してください。当科では退院後1ヵ月後、3ヵ月後、半年後といった間隔で、最終的には12回/年程度の通院です。

こういったことが、満足度の高い手術を受けるために重要ではないかと思います。

2. 術後の患者満足度を左右するものは?

人工股関節

wadai020-2 (1)特に、人工股関節においては痛みが取れる事はもちろんのこと、脱臼しにくい安定した股関節を得る事と、人工関節が長期にわたって長持ちすることが非常に重要だと思います。そのためには人工股関節を骨に対して良い角度で入れる必要性があります。
従来のように医師の経験や感覚だけで手術するのではなく、コンピューターを使ったナビゲーション手術を行うことにより、骨に正確に良い角度で入れる事ができます。そうすることで、長期にわたり人工関節が長持ちし、脱臼を起こしにくい安定した股関節が得られ、術後、「あれをしてはいけない。これをしてはいけない」という動作制限を必要としない生活をすることができるようになります。このように、人工股関節においては、より優れた機能、より優れた長期成績を得ることで、日常生活が改善し、そのことが満足度に繋がると考えます。

人工膝関節

wadai020-3 (1)膝関節の場合は、きれいなまっすぐな脚、よく曲がり、よく伸びる膝にする事が重要です。歩行、階段の上り下り、椅子の立ち座りなど日常生活動作が容易になります。歩く姿勢も若々しくなり、手術前よりおしゃれをして外出しておられるかたをよく見ます。人生を楽しむためにちょっとしたスポーツもできるようになります。
そのためには、股関節と同様に、膝関節においても人工関節を骨にきれいに正確に入れる事が非常に重要ですし、そのことは人工膝関節を長くもたせるという点においても大事です。
手術を行うときは、人工膝関節を正確に設置するために、骨を切る角度、骨を切る量を適切にコントロールすることが重要なのですが、ナビゲーション手術によって、そのコントロールが可能となります。従来より手術時間は少しかかりますが、適切な時間内に正確な手術が可能です。

 

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見た目も満足度を左右:(左)手術前 (中央)右膝置換術後 (右)両膝置換術後

3. 『いい人工関節・いい手術』が重要とのことですが、そのために行っていることを教えてください。

医師が人工関節に対して十分な深い知識を持って、良い人工関節を選択するということが非常に重要だと思います。そのために、最新の知識を得ようと日々勉強しています。 また手術については、手術前に一人一人異なる関節の状態を把握し、個々の患者さんそれぞれに最適な術前のプランニングを行い、常により質の高い正確な手術をめざし、術後のケアも怠ることなく、治療を行っています。
いい治療を行うことで、術後患者さんの心からの笑顔をみることが大きな楽しみです。

 4. 患者さんへのメッセージ(ビデオ)

協力:
住友病院     人工関節センター長    渋谷 高明 先生

この情報サイトの内容は、整形外科専門医の監修を受けておりますが、患者さんの状態は個人により異なります。
詳しくは、医療機関で受診して、主治医にご相談下さい。