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人工関節全置換術



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人工股関節全置換術(じんこうこかんせつぜんちかんじゅつ) 


 人工股関節全置換術(じんこうこかんせつぜんちかんじゅつ)


 皮膚切開
股関節の筋肉の分け目を切開する方法がいくつかあり、太ももの側方、後方、前方などの皮膚切開をおこないます。


 骨の切除
大腿骨(だいたいこつ)の骨頭を切り、髄腔(ずいくう)をととのえます。
骨盤側の受け口(寛骨臼(かんこつきゅう))の表面をけずります。


 人工関節の設置
カップを骨盤にはめ込みます。ネジや骨セメントを使って固定します。
ステムを大腿骨に設置します。骨セメントを使用する場合があります。
そして、骨頭、インサートを組み合わせます。






人工股関節置換術 動画



 人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)の合併症

 脱臼(だっきゅう)
関節がはずれてしまうことです。脱臼すると通常は痛みで足を動かすことができません。脱臼してしまった場合は、すぐに医師が元に戻します。
脱臼を頻繁にくり返す場合は、再度手術が必要になる場合もあります。
脱臼しやすい動作に注意しましょう。ベッドでからだの向きを変えるときや、横を向いているときは、外転枕(がいてんまくら)やクッションを正しく使用しましょう。


 深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)肺塞栓症(はいそくせんしょう)
深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)とは、下肢の静脈に血の塊(血栓けっせん)ができて血管をふさいでしまうことです。血流が悪くなり、下肢がむくんだりふくらはぎが痛んだりします。これは、飛行機などの乗り物で長時間足を動かさないでいるときにもおこります。いわゆるエコノミークラス症候群(旅行血栓症)です。
この血栓(けっせん)が何かの拍子にはがれて、血流に乗って肺まで到達し、肺の血管をふさいでしまうのが肺塞栓症です。肺の血管がふさがると、血液ガスの交換(二酸化炭素と酸素の交換)がうまくおこなわれず、呼吸困難や胸の痛みを感じるようになります。時に取り返しのつかない重篤な症状を引き起こす可能性があります。
予防のために、手術中から術後にかけて、一定の時間をおいて下肢の血管を圧迫する装置(間欠的(かんけつてき)空気圧迫装置)を装着したり、あるいは血栓をできにくくする薬剤(低用量未分画(ていようりょうみぶんか)ヘパリン)を投与したりします。また、弾性(だんせい)ストッキングを着用する場合もあります。患者さん自身でできる予防法としては、足首の曲げ伸ばし運動があります。


深部静脈血栓症 動画


 細菌感染(化膿)
人工関節は生体インプラントであり、生体親和性が高い(生体となじみやすい)ものです。一度感染を起こしてしまうと、細菌が人工関節に膜(バイオフィルム)を作ってしまい、抗生剤が効きにくくなります。そして膜の中で細菌が繁殖してしまうため、感染が大変治りにくい環境になります。感染すると手術した部位の皮膚が赤くなったり、腫れたり、膿が出たりします。ひどい場合には、人工関節を抜きとらなければならないこともあります。
感染には、術後早期におこるものと、比較的年月を経てからおこるものとがあります。


 人工関節のゆるみ、破損、磨耗(まもう)(すり減る)
人工関節を使用していると、ゆるんだり、破損したり、磨耗(まもう)する(すり減る)場合があります。ゆるみは、人工関節の固定性が悪くなってずれてしまうことです。右写真の例では、大腿骨(だいたいこつ)ステムが外側に傾いて、その先が骨にあたって、その部分の骨がふくらんで見えます。
磨耗は、主に人工関節を構成するプラスティックの部分に見られます。人工関節が少しずつすり減ると磨耗粉(まもうふん)が出ます。その磨耗粉が周辺の骨を溶かす骨融解(こつゆうかい)をおこす原因となる場合があります。退院後に生活を続けていくなかで、痛みなどの問題がなくても、定期的に受診を続けましょう。


 人工材料に対する生体の異常反応(アレルギー反応)
ごくまれに金属などにアレルギー反応を示すかたがいます。金属アレルギーの既往があるかたは、そのことを手術前に医師に必ず伝えてください。
なお、人工関節に使用される金属は、人体への影響が比較的少ないとされていて、アクセサリーなどの金属アレルギーがあっても、人工関節では反応をおこさない場合がほとんどです。


※詳しくは医師におたずねください。


 人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)のながれ

 手術前日

  手術の前日は、可能であれば入浴またはシャワー浴をして全身を清潔にします。

  手術の前日は、決められた時間以降、食べたり飲んだりができなくなります。手術にそなえて胃の中を空にしておきます。まれに、手術のための薬の副作用で吐き気をもよおすことがあり、吐いた物が気管につまる危険性があるからです。


 手術当日

  手術の準備がととのうと、手術室へ移動します。

  麻酔をかけます。麻酔をかけると、患者さんは手術中眠るか(全身麻酔)、下半身の感覚がなくなります(脊椎(せきつい)麻酔あるいは硬膜外(こうまくがい)麻酔)。

  人工股関節全置換術がおこなわれます。


 手術後

  手術直後から、医師や看護師が患者さんの状態を観察します。

  尿道(にょうどう)に管が入っています。

  からだの向きを変えるときや、横向きに寝るときに、両足の間に枕(外転枕(がいてんまくら))を入れます。これは、関節が脱臼(だっきゅう)しないように、足を正しい位置に保っておくためのものです。つけはずしは医療者の指示にしたがいましょう。

  深部静脈血栓症の予防のために、弾性(だんせい)ストッキングを着用します。さらに、下肢を圧迫する特殊な器械を装着することもあります。

  手術した部位の痛みに対して、注射や点滴で鎮痛剤(痛み止め)を投与する場合があります。鎮痛剤を使用しても、多少の痛みを感じることもありますが、これは異常ではありません。しかし、薬で痛みがやわらがない場合には、必ず医師・看護師にそのことを伝えましょう。

※わからないことや不自由なことがある場合は、遠慮せずに医療者に伝えましょう。



 リハビリテーションを含む後療法(手術後の治療)


リハビリテーションは、ベッド上での簡単な運動から始まります。股関節の周辺の筋肉を少しずつきたえる運動をします。
患者さんの年齢や筋力、手術前の関節の状態によって個人差がありますが、一般的に次のような段階で経過します。

   ベッド上で下肢の運動を始めます。

   ベッドから足をたらしてすわる。

   車椅子(いす)に移動する(最初は介助をうけて乗り降りします)。

   歩行練習:リハビリテーション室で訓練します。

   杖歩行(松葉杖、一本杖)の練習をします。

   階段の昇り降り練習。


※自分で勝手にすすめず、医師、理学療法士や看護師の指示にしたがっておこないましょう。


 退院後の注意

退院後の診察で、医師は患者さんの関節が順調に治ってきていることを確認します。必ず受診しましょう。


 こんなときは病院へ連絡しましょう
   手術した関節の痛みが増してきた場合
   ふくらはぎや下肢の痛みや腫れが気になる場合
   きずぐちが異常に赤くなったり、熱を持ったり、膿や血などが出ている場合
   呼吸困難や胸の痛みがある場合


 危険な動きは避けましょう
動きによっては、人工関節に大きな負担をかけることがあります。このような動きは脱臼(だっきゅう)や早くに磨耗(まもう)する(すり減る)原因となり得ますので、気をつけましょう。無理をしないことが人工関節を長持ちさせる上で大切です。


 より安定した関節にするために
関節の周辺の筋肉がきちんと働くと、関節の安定性が高まります。入院中から、理学療法士や医師に相談し、自身にあった運動をみつけておくとよいでしょう。

股関節のまわりの筋肉をきたえる運動


 術後の脱臼(だっきゅう)予防

人工股関節は、関節の動きによって脱臼(だっきゅう)する場合があります。股関節の周辺の筋力がついて新しい関節が安定するまでは、日常生活の動作に注意が必要です。
また、常に気をつけなければならない動作(してはいけない動作)もあります。

人工股関節の脱臼には、前方(ぜんぽう)脱臼と後方(こうほう)脱臼があります。いずれも、臼蓋側(きゅうがい)カップの縁に大腿骨ステムの一部が接触し、テコの作用によっておこります。手術の方法や人工関節の設置具合、また、患者さんの骨格などによって脱臼しやすい方向が異なります。手術後に医師に確認すると良いでしょう。

  前方脱臼 動画   後方脱臼 動画


 危険な動きはさけましょう
   足は組まないようにしましょう。
   手術側を上にした横座りはやめましょう。


 動画で見る日常動作


  良い例

  悪い例

正座する

ベッドに腰掛けてものを拾う

床にすわる

しゃがむ

イスに座る/立ち上がる

腰を曲げる

 
 

イスから立ち上がる

靴下を脱ぐ(良い例)

靴下を脱ぐ(悪い例)


 足の爪を切る・靴下を脱ぐ
・靴下エイドやリーチャーを使用してもよいでしょう。
・爪が切りにくい場合は、無理をせず、家族に協力してもらいましょう。



 リーチャーを使用する
床に落ちたものを拾うときに便利です。



 浴そうの出入り

・浴そうのふちが高いとき:

浴そうのふちに腰掛けて入ります。手術をしていないほうの足から入り、手術をしたほうの足から外に出します。

・浴そうのふちが低いとき:

腰掛けずに、手すり等につかまりながら直接入ります。手術をした方の足からまたいで入り、手術をしていない方の足から外に出します。

・浴そうの中でも、手術した方の股関節を曲げ過ぎないようにしましょう。


 横になるとき
・寝ている時も足を組まないようにしましょう。
・両足の間に枕などを挟むと安心です。


この情報サイトの内容は、整形外科専門医の監修を受けておりますが、患者さんの状態は個人により異なります。
詳しくは、医療機関で受診して、主治医にご相談下さい。




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