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人工股関節全置換術における最新の手術計画 ~3次元(3D)画像、実物大モデルについて~

おゆみの中央病院  整形外科部長 人工関節・関節機能再建センター センター長  中嶋 隆行

人工股関節置換術の適応があると診断され、患者様が心配されることのなかに、「医師より提案されたインプラントは自分の体に合うのだろうか」、「術後はどんな関節の形や足の長さになるか」があると思います。その気持ちは執刀する医師も同様で様々な術前計画を行っていますが、これまではレントゲン写真上の平面で、インプラントを照合するといった方法が取られており、その精度には限界がありました。

昨今、術前計画はコンピューター上に3次元モデルを用いた股関節完成画像(テンプレート)を作成し、患者様に最適なインプラントとそのサイズを術前に決定することができます。この3次元の股関節の完成画像によって、術後の足の長さの調節も術前に検討することが可能となります。下の写真が実際に手術で使用した術前計画の画像です。切除する骨の量を決定し、どのような大きさのインプラントをどの角度で、どの位置に設置するか、その結果どのような足の長さや配置になるのかを術前に確認することができます。takada hideko 右THA_すべて

またこの3次元テンプレートの優れた点は、コンピューター上で実際に股関節を動かすことができることです。脱臼の原因となるインプラント同士やインプラントと骨の接触、脱臼危険肢位を確認することができ、問題点があれば術前に修正を行い、実際の手術で計画通りに手術を行います。

人工股関節全置換術の目的は、術後日常生活への復帰の際に不自由のない股関節の再現です。しっかりとした術前計画をたて、患者様にわかりやすい形で表現し、術後のイメージを共有することは手術と同様に重要です。変形性股関節症の診断をうけ人工股関節置換術を提案された際には、具体的な手術の方法、そしてリハビリテーションも含めて何でも医師に質問して手術する施設を選択してください。そして術後の定期的な診察においての医師との会話を術後の日常生活をより良いものにする材料にして頂きたいと思います。