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人工関節は、手術する関節だけを治すのではありません

長嶺 隆二杉岡記念病院

膝関節や股関節の人工関節が必要な方の多くは、いわゆる高齢者になります。破壊された関節を人工関節に置き換えることによって痛みはとれますが、人工関節のメリットは痛みがなくなるだけではありません。

膝や股関節に痛みがありますと、歩くことが困難になり、また、嫌になります。痛みがあると笑うことも少なくなり、自宅から出ることも嫌になることがあります。このような状態が続きますと、運動不足となり、どんどん身体が年をとっていきます。逆に手術をして膝や股関節の痛みがとれ、動けるようになりますと、散歩やゲートボールなどの運動が可能となってきます。また、旅行に行けるようになり、老人会などの集まりにも出席するなどして、笑う機会も増えてきます。運動療法や笑うことは、動脈硬化、高血圧、糖尿病、痴呆、脳卒中、心臓病を改善することが医学的に認められています。したがいまして、膝や股関節の手術をすることで、身体の老化を予防、さらに、若返らせることが可能になります。膝や股関節は人工関節で置き換えることが出来ますが、動脈硬化になった血管や、悪くなった心臓を置き換えることは出来ません。アンチエイジングという、老化予防の面からも人工関節はとても有用な手術です。

一方、政府は介護保険制度を充実させ、長期療養型のいわゆる老人病院を削減しています。したがいまして、膝などが痛くても、自宅で療養することになります。こうなりますと、ご家族の負担も重くなります。介護をされているご家族の4人にひとりがうつ傾向にあるとの報告もなされています。人工関節を受けることで、高齢になっても自立して生活ができるようになり、ご家族の負担も非常に少なくなります。人工関節をされた患者さんで、もうひとつ、よく言われることがあります。“孫と遊べるようになりました”と。お孫さんと遊び、お孫さんを抱きかかえ、面倒をみることも可能になります。社会的、経済的な面からも人工関節はとても有効な手術です。

このように、人工関節の手術を受けますと、よく笑い、よく運動して、若さを保ち、ご家族に迷惑をかけずに自立して、お孫さんと遊ぶ、ことが可能となってきます。
膝や股関節が痛くて人工関節を勧められている皆さん、怖いのは皆一緒です。人工関節の手術後、リハビリが大変なのは3~4週間だけです。手術後の良き人生のことを考えてみてください。