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人工関節手術後の痛みについて

人工関節置換術は関節の痛みを取り除く優れた手術です。しかし、患者さんにとっては、手術のときや手術のあとの痛みがどうかということがとても気になることと思われます。今回は気になる手術後の痛みについて書かせていただきます。
手術は一般的に全身麻酔または脊椎麻酔(下半身麻酔)で行われ、それに硬膜外麻酔を追加することがあります。どの麻酔を用いても手術中に痛みを感じることはありません。硬膜外麻酔は腰に痛み止めの管をいれそこから麻酔薬を注入する方法で、これにより術後の痛みが軽くなります。手術のときに管をいれますが、麻酔をしますので強い痛みはありません。ただし、患者さんにより硬膜外麻酔を行えない場合があります。
術後の痛みのピークは術直後から手術当日夜となります。その後は時間経過とともに軽減し、術後2~3日で強い痛みは落ち着きます。痛みの強さがどの程度かを一般的にいうのは難しいですが、当院において痛みの強さを10点満点(耐えきれない痛みを10、全く痛くなければ0)で評価したところ、手術当日は4程度の痛みを訴える患者さんが多いようです。
術後の痛みに対する処置には、痛み止めの飲み薬、座薬、注射などがあります。手術当日は飲むことが出来ないので、まず痛み止めの座薬を使うこととなります。座薬は飲み薬にくらべて効き目が強く、飲み薬が効かない場合にも座薬を使用します。座薬は6~8時間程度有効です。座薬を使用しても痛みが続く場合には痛み止めの注射を行います。注射には眠くなる効果もありほとんどの場合はこれらの処置を行えば痛みは楽になります。
膝の手術の場合には股関節に較べて術後の痛みが強い傾向にあります。これは膝の傷は前にありますが、リハビリで膝を曲げる練習をするときに、傷口が伸ばされるようになるので痛みを感じます。痛みがなくなってから曲げる練習をするのでは、膝が固くなるために早い時期から始めることが重要です。歩く練習では手術後数日たつと歩いたときの痛みは軽くなり、手術の効果を実感することと思います。
私の病院ではPCA(Patient controlled analgesia)という点滴に痛み止めをいれる器械を使っています。座薬や注射は痛くなってから、看護師さんを呼んで処置をしてもらいますが、この PCAでは痛みを感じたときにボタンを押すと痛み止めが点滴から入る仕組みとなっています。また、ボタンを押したあとは一定の時間ボタンを押しても痛み止めがはいらない仕組みとなっているので入りすぎの危険もありません。また、膝の手術の場合にはリハビリの前に痛み止めをいれることにより、曲げる練習が少し楽になります。
ここに書かせていただいたのは手術後の痛みのコントロールの一例です。病院により方法は様々です。昔は手術をしたのだから痛いのは当たり前だというような風潮がありましたが、現在では手術後の痛みをいかに軽減するかということも重要な問題となっています。手術をする際には担当の先生に術後の痛みについて相談してもよいと思います。

浅野先生の市民講座